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児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書

第1回日本政府報告 (日本語仮訳) 平成20年4月 「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利条約の選択議定書」政府報告 (目次) パラ番号 1. 導入 1-14 2. 児童の売買、児童ポルノ及び児童買春の禁止に関する刑事法令 15-44 (1)児童の定義 15 (2)議定書第3条1に掲げられた各行為の犯罪化 16-35 (3)刑罰の加重・減刑事由 36 (4)各犯罪の出訴期間 37 (5)犯罪化されているその他の行為 38 (6)法人の定義及び議定書第3条1に掲げられた行為に係る法人の責任 39-42 (7)未遂、共謀、加担行為の犯罪化 43-44 3. 刑事手続 45-51 (1)裁判権 45-48 (2)物や収益の押収、没収及び(犯罪を行うために使用された)場所の閉鎖 49 (押収) 49 (収益の没収) 50 (議定書第7条(c)に定める犯罪の実行に使用された場所の一時的又は恒久的な閉鎖) 51 4. 被害者である児童の保護 52-73 (1) 捜査が、被害者の実際の年齢が判然としない場合にも開始されることを 52-53 確保するための措置及びその判断のために用いられる方法 (2) 刑事手続における児童に対する特別の配慮 54-73 (捜査における被害児童への配慮) 54 (公判手続きにおける児童への配慮) 55-58 (被害児童への情報提供) 59-60 (児童の意見等の表明) 61 (訴訟手続における支援サービス) 62 (児童のプライバシーの保護) 63-64 (被害者等への脅迫及び報復からの保護) 65-66 (賠償) 67-68 (被害児童のリハビリ支援等) 69-73 5. 児童の売買、児童買春及び児童ポルノの予防 74-97 (1) 犯罪を防止するための措置 74-75 (国内計画等) 74-75 (人身取引) 76 (買春旅行) 77-78 (インターネットを利用した児童買春・児童ポルノの防止) 79-83 (2) 公衆一般の意識向上に関する措置 84-92 (3) 犯罪を宣伝する物の製造や頒布を効果的に禁止するための措置 93-97 6. 国際協力 98-120 (1)貧困等に対処するための国際協力 98-100 (2)被害児童の保護・支援 101-103 (3)刑事手続に関する国際協力 (司法協力) 104-107 (物・収益の押収又は没収のため他の締約国から受けた要請に関する情報) 108-110 (4)二国間・多国間の国際約束・協力 111-120 (国際機関・外国当局・NGOとの協力) 111-112 (バリ・プロセスに対する貢献) 113-114 (G8等との協力) 115-116 (条約等の締結) 117-118 (財政援助) 119-120 7. その他児童の権利の実現に一層貢献する国内法及び国際文書 121 =1.導入= 1. 我が国は、2005年1月24日に「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する 条約の選択議定書」(以下「議定書」という。)を批准し、2005年2月24日に我が国について発効した。 議定書第12条1は、締約国に対し、締約国について議定書が効力を生じた後2年以内に、議定書の規定の 実施のためにとった措置に関する包括的な情報を提供する報告を児童の権利に関する委員会に提出すると規 定しており、本政府報告は、右に従い提出するものである。 2. 我が国は、議定書を批准するに当たり、議定書担保の必要性及び国内の犯罪情勢にかんがみ、児童福祉法 及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポル ノ禁止法」という。)につき改正を行い、批准後は、議定書の内容につき関係省庁に周知するとともに一致協 力してその履行に努めてきている。 3. 多岐にわたる分野に関する規定を有する議定書の履行に当たっては、複数の省庁による取組み及び地方自 治体や市民・NGO との協力が必要であり、かかる取組みや協力の実態については続く各論にて紹介する。関連 する主な省庁は、警察庁、法務省、外務省、厚生労働省の他、内閣官房、内閣府、総務省、国土交通省であ る。本政府報告の作成に当たっては、こうした省庁が議定書の履行に関連して行った立法や施策等をとりま とめ、児童の権利条約の趣旨及び市民・NGO からの意見を十分に踏まえつつ作成した。 4. 議定書に関連した活動は多岐にわたり、議定書に掲げられる権利の実現に直接的又は間接的に貢献する活 動の予算規模の包括的な把握は困難であり、議定書に関連する予算動向を把握することは容易でないが、本 件分野における国際協力として我が国が行う財政援助の例については下記各論にて紹介する。 5. 関係省庁においては、以下のとおり関連の職員に対して人権教育を実施しており、議定書の内容の周知や 必要な研修を行っている。 (警察庁) 6. 警察では、全国会議等において、警察職員に対し、議定書及び議定書の国内担保法である2004年に改 正された児童買春・児童ポルノ禁止法及び児童福祉法の改正概要について周知を図り、これらの事犯に対す る取締り等に努めている。 7. また、児童買春等の少年の福祉を害する犯罪の取締りに従事する警察官に対し、事件捜査及び児童の保護 に必要な知識及び技能の向上を図るための教育、研修を行っているほか、都道府県警察の少年サポートセン ター等に勤務する少年補導職員等に対しては、大学教授やカウンセラー等の専門家を講師としたカウンセリ ング技術専科等の教育を実施している。 (法務省) 8. 検察官に対しては、日常の執務の中で、上司が個別事件を通じて、個々の検察官に対し指導を行っている ほか、経験年数等に応じた各種研修において、「児童及び女性に対する配慮」及び「国際人権関係条約」等 をテーマとした講義を実施するなどし、議定書の内容等の周知を徹底している。 9. 矯正施設の職員については、矯正研修所及び同支所(全国8か所)等の各種研修において、児童買春、児 童ポルノ、児童虐待問題を始めとする人権問題に係る研修科目を受講させるなど研修を実施し、議定書の内 容等の周知を図っている。 10. 保護観察官に対しては、児童(18歳未満)を含む少年(20歳未満)の保護や福祉についての学習や トレーニングの機会を設けており、具体的には、その経験年数に応じた各種研修において、児童相談センタ ーにおける実地実習や少年の発達心理学のほか、カウンセリング等の心理療法の習得等を含むカリキュラム を実施している。なお、保護観察所が実施している保護司に対する各種研修において、保護観察等の処遇の 場面における児童を含む少年の保護や福祉等について学ぶ機会を設けている。 11. 入国管理局職員については、各種研修プログラムの中で、外部講師(大学教授等)等により、児童の権 利に関する条約を含む人権関係条約等の教育を行っているが、平成16年度においては、外国人に対する出 入国審査や処遇業務等に従事している職員を対象とした人身取引を中心とした人権研修を実施し、18歳未 満の児童を対象とする事犯を含む人身取引等に対する教育を行った。 (外務省) 12. 外務省においては、新入職員に対する研修の中で人権教育を行っており、議定書を含む主要人権条約の 趣旨等につき周知を図っている。 (文部科学省) 13. 文部科学省においては、学校関係者に対し、児童の権利条約の趣旨やわいせつ行為の禁止等職員の服務 規律、虐待を受けた児童への配慮事項等について適切な理解と周知徹底に努めている。 (厚生労働省) 14. 児童相談所や児童福祉施設の職員に対しては、虐待を受けた児童及び心身に有害な影響を受けた児童等 に対応するための研修を実施し、また、各種機関が実施する研修において、議定書の趣旨等についての周知 を推進している。 =2.児童の売買、児童買春及び児童ポルノの禁止に関する刑事法令= (1)児童の定義 15. 議定書3条1に挙げられる行為の犯罪化については、児童買春・児童ポルノ禁止法、児童福祉法、刑法、 入管法のそれぞれの関連規定により実施しているところ、児童買春・児童ポルノ禁止法及び児童福祉法に定 められた犯罪構成要件にいう「児童」とは、満18歳に満たない者をいう(児童買春・児童ポルノ禁止法2 条1項、児童福祉法4条)。 (2)議定書第3条1に掲げられた各行為の犯罪化 @児童を性的に搾取するための、児童の提供、移送及び収受の犯罪化(3条1(a)(i)a) 16. 「提供」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法8条1項(児童買春等目的人身売買) 1年以上10年以下の懲役 ○児童福祉法60条2項、34条1項7号(刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者等に、情を知って、児童を引き 渡す行為等の禁止違反) 3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○同法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下 に置く行為の禁止違反) 3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 (注:2005年改正により刑罰加重) ○刑法225条(わいせつ目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第4項(人身売渡し) 1年以上10年以下の懲役 (注:2005年改正により新設) ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 (注:2005年改正により新設) ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為) 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 17. 「移送」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法8条1項(児童買春目的人身売買)1年以上10年以下の懲役 ○児童買春・児童ポルノ禁止法8条2項(児童買春目的被略取児童等居住国外移送)2年以上の有期懲役 ○児童福祉法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の 支配下に置く行為の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(わいせつ目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第4項(人身売渡し) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の3(被略取者等所在国外移送) 2年以上の有期懲役 (注:2005年改正により新設) ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 ○同法74条第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどの行為)5年以下の懲役又は30 0万円以下の罰金 ○同法74条の2第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に向けて輸送するなどの行為) 3年以下の 懲役又は200万円以下の罰金 ○同法74条の4第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどした者から、その集団密航者 を収受等する行為)5年以下の懲役又は300万円以下の罰金 18. 「収受」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法8条1項(児童買春目的人身売買)1年以上10年以下の懲役 ○児童福祉法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の 支配下に置く行為の禁止違反) 3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(わいせつ目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第1項(人身買受け) 3月以上5年以下の懲役 (注:2005年改正により新設) ○刑法226条の2第2項(未成年者買受け) 3月以上7年以下の懲役 (注:2005年改正により新設) ○刑法226条の2第3項(営利、わいせつ目的等人身買受け)1年以上10年以下の懲役 (注:2005年改正によ り新設) ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法227条3項(被略取者収受) 6月以上7年以下の懲役 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 ○同法74条の4第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどした者から、その集団密航者 を収受等する行為) 5年以下の懲役又は300万円以下の罰金 A営利目的で児童の臓器を引き渡すための児童の提供、移送及び収受の犯罪化(3条1(a)()b) 19. 「提供」 ○児童福祉法60条2項、34条1項7号(刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者等に、情を知って、児童を引き 渡す行為等の禁止違反) 3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○同法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下 に置く行為の禁止違反) 3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(営利目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法225条の2第1項(身の代金目的略取等) 無期又は3年以上の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第4項(人身売渡し) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の3(被略取者等所在国外移送) 2年以上の有期懲役 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 20. 「移送」 ○児童福祉法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の 支配下に置く行為の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(営利目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法225条の2第1項(身の代金目的略取等) 無期又は3年以上の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第4項(人身売渡し) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の3(被略取者等所在国外移送) 2年以上の有期懲役 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為) 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 ○出入国管理及び難民認定法74条1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどの行為) 5 年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ○出入国管理及び難民認定法74条の2第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に向けて輸送するなど の行為) 3年以下の懲役又は200万円以下の罰金 ○出入国管理及び難民認定法74条の4第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどした者 から、その集団密航者を収受等する行為)5年以下の懲役又は300万円以下の罰金 21. 「収受」 ○児童福祉法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の 支配下に置く行為の禁止違反 3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(営利目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法225条の2第1項(身の代金目的略取等) 無期又は3年以上の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第1項(人身買受け) 3月以上5年以下の懲役 ○刑法226条の2第2項(未成年者買受け) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法226条の2第3項(営利、わいせつ目的等人身買受け)1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法227条3項(被略取者収受) 6月以上7年以下の懲役 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 ○出入国管理及び難民認定法74条の4第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどした者 から、その集団密航者を収受等する行為)5年以下の懲役又は300万円以下の罰金 B 強制労働に従事させるための、児童の提供、移送及び収受の犯罪化(3条1(a)()c) 22. 「提供」 ○児童福祉法60条2項、34条1項7号(刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者等に、情を知って、児童を引き 渡す行為等の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○同法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下 に置く行為の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(営利目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法225条の2第1項(身の代金目的略取等) 無期又は3年以上の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第4項(人身売渡し) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の3(被略取者等所在国外移送) 2年以上の有期懲役 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 23. 「移送」 ○児童福祉法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の 支配下に置く行為の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(営利目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法225条の2第1項(身の代金目的略取等) 無期又は3年以上の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第4項(人身売渡し) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の3(被略取者等所在国外移送) 2年以上の有期懲役 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせたためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 ○同法74条1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどの行為) 5年以下の懲役又は30 0万円以下の罰金 ○同法74条の2第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に向けて輸送するなどの行為) 3年以下の 懲役又は200万円以下の罰金 ○同法74条の4第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどした者から、その集団密航者 を収受等する行為)5年以下の懲役又は300万円以下の罰金 24. 「収受」 ○児童福祉法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の 支配下に置く行為の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○刑法220条(逮捕・監禁) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法224条(未成年者略取・誘拐) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法225条(営利目的略取・誘拐) 1年以上10年以下の懲役 ○刑法225条の2第1項(身の代金目的略取等) 無期又は3年以上の懲役 ○刑法226条(所在国外移送目的略取・誘拐) 2年以上の有期懲役 ○刑法226条の2第1項(人身買受け) 3月以上5年以下の懲役 ○刑法226条の2第2項(未成年者買受け) 3月以上7年以下の懲役 ○刑法226条の2第3項(営利、わいせつ目的等人身買受け)1年以上10年以下の懲役 ○刑法226条の2第5項(所在国外移送目的人身売買) 2年以上の有期懲役 ○刑法227条3項(被略取者収受) 6月以上7年以下の懲役 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 ○同法74条の4第1項(自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に入らせるなどした者から、その集団密航者 を収受等する行為)5年以下の懲役又は300万円以下の罰金 C 適用可能な国際的な法的文書に違反する児童の養子縁組への不当な勧誘の犯罪化(3条1(a)()) 25. 議定書第3条1(a)(ii)及び同条5にいう「養子縁組に関する国際的な法的文書(international legal instruments on adoption)」は、児童の売買が養子縁組の形を借りて行われるケースがあることにかんがみ て定められたものであり、交渉経緯等から、「国家間にまたがる養子縁組に関する子の保護及び協力に関す るハーグ条約」(以下、「養子縁組ハーグ条約」という。)であると解される。他方、議定書作成過程にお いては、「養子縁組に関する国際的な法的文書」を締結していない国については、第3条1(a)(ii)及び 第3条5に基づく義務を負わないとされており、我が国は、上記の養子縁組ハーグ条約を締結していないた め、第3条1(a)(ii)及び同条5に規定する義務は負っていないと解される。 D 児童買春目的での児童の提供、取得、あっせん及び供給の犯罪化(3条1(b)) 26. 「提供」、「供給」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法8条1項(児童買春目的人身売買)1年以上10年以下の懲役 ○児童福祉法60条2項、34条1項7号(刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者等に、情を知って、児童を引き 渡す行為等の禁止違反) 3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○同法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下 に置く行為の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 27. 「取得」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法8条1項(児童買春目的人身売買)1年以上10年以下の懲役 ○児童福祉法60条2項、34条1項9号(児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の 支配下に置く行為の禁止違反)3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項2号(外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行 為)3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 28. 「あっせん」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法5条1項(児童買春周旋)5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 ○出入国管理及び難民認定法73条の2第1項3号(外国人に不法就労活動をさせる行為等に関しあっせんする行為) 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 E 児童ポルノを製造し、配布し、頒布し、輸入し、輸出し若しくは販売し又はこれらの目的で保有することの犯罪化 (3条1(c)) 29. 「製造」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項(特定・少数者提供目的等児童ポルノ製造) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条3項(児童に一定の姿態をとらせるなどして児童ポルノを製造する行為) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項(不特定・多数者提供目的等児童ポルノ製造) 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 30. 「配布」、「頒布」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項(児童ポルノを不特定・多数の者に提供し、又は公然陳列する罪) 5年以下の 懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 31. 「輸入」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項(特定・少数者提供目的等児童ポルノ輸入) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項(不特定・多数者提供目的等児童ポルノ輸入) 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 ○関税法109条2項(関税法69条の8 1項8号)(2006 年4 月1 日から施行予定) 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 32. 「輸出」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項(児童ポルノ提供) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項(特定・少数者提供目的等児童ポルノ輸出) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項(不特定・多数者提供目的等児童ポルノ輸出) 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 ○関税法108条4項、関税法69条の2 1 項2 号 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 (2006 年4 月1 日から施行予定) 33. 「提供」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項(児童ポルノ提供) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 34. 「販売」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項(児童ポルノを不特定・多数の者に提供) 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 35. 「保有」 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項(特定・少数者提供目的等児童ポルノ所持) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ○児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項(不特定・多数者提供目的等児童ポルノ所持) 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科 (3)刑罰の加重・減刑事由 36. (2)に掲げる各犯罪に対する刑罰を加重し、又は減軽する条件は、刑法に基づくこととなり、加重事 由としては、再犯加重(57条)、併合罪加重(47条、48条)、減軽事由としては、未遂減免(43条)、 心神喪失及び心神耗弱(39条)などの法律上の減軽、酌量減軽(66条)がある。 (4)各犯罪の出訴期間 37. 刑事訴訟法に定められた公訴時効期間(250条)を経過するまで、検察官が公訴を提起することがで きる。この公訴時効期間は、刑の軽重により長短があり、2004年に改正されたところであるが、上記(2) に掲げた罪のうち、長期5年未満の懲役に当たる罪については3年、長期10年未満の懲役に当たる罪につ いては5年、長期15年未満の懲役に当たる罪については7年、長期15年以上の懲役に当たる罪について は10年、無期懲役に当たる罪については15年である。 (5)犯罪化されているその他の行為 38. 我が国では、上記の他、児童の権利を擁護するという同議定書の趣旨に合致するものとして各行為を犯 罪化している。 ○児童買春(児童買春・児童ポルノ禁止法4条)(注:児童買春をした者も処罰可能) ○児童ポルノの画像データ(電磁的記録)の提供と、これを目的とした保管(同法7条1項、2項、4項、5項各後段) ○不特定・多数者提供目的等で、日本国民が、児童ポルノを外国に輸入し、外国から輸出する行為(同法7条6項) ○児童買春周旋目的で、人に児童買春をするように勧誘する行為(同法6条) ○児童に淫行をさせる行為(児童福祉法60条1項、34条1項6号) ○成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が営利を目的として、児童の養育をあっせんする行為(同法60 条2項、34条1項8号) ○店舗型性風俗特殊営業又は無店舗型性風俗特殊営業を営む者が、児童(18歳未満の者)を接客業務に従事させる行為 (風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律50条1項5号、28条12項3号、50条1項6号、31条の3 第3項1号) などが処罰の対象となっている。 (6)法人の定義及び議定書第3条1に掲げられた行為に係る法人の責任 39. 我が国において、法人とは、自然人以外で、法律上の権利義務の帰属主体となること(権利能力)を認 められているものをいう。 40. 我が国の国内法上、法人の責任を確立する措置としては、刑事上の両罰規定、民事上の損害賠償請求(民 法第第44条、709条等)、行政上の制裁としての行政処分がある。 41. なお、両罰規定とは、犯罪が行われた場合に、その行為者を罰するほか、その行為者と一定の関係にあ る他人(法人を含む)に対しても刑を科する旨の規定である。議定書との関係で、両罰規定を設けている法 律には、以下のようなものがある。 ○児童買春・児童ポルノ禁止法11条(5、7条) ○児童福祉法60条5項(34条1項7号、9号) ○出入国管理及び難民認定法76条の2(73条の2、74条、74条の2、74条の4) ○関税法117条(109条) 42. また、行政処分とは、法規に基づき、具体的場合について権利を設定し義務を命じその他法律上の効果 を発生させる行政権の行使をいう。議定書との関係で法人に対する制裁として課される行政処分には、風俗 営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律上の営業の全部若しくは一部の停止(風俗営業等の規制及び 業務の適正化等に関する法律26条等)等がある。 (7)未遂、共謀、加担行為の犯罪化 43. 議定書においては、「未遂」については、締約国の国内法に従って犯罪化すべきとされているところ、 我が国については、刑法228条(224条、225条、225条の2、226条、227条)、児童買春・ 児童ポルノ禁止法8条3項(児童買春等目的人身売買等)、出入国管理及び難民認定法74条3項、74条 の4第3項、関税法109条3項の規定に基づき罰せられる。 44. 「共謀」、「加担」は、刑法に基づき、それぞれ、共謀は共同正犯(刑法第60条)、加担は、教唆(同 法第61条)又は幇助(同法第62条)の構成要件に該当する場合には、処罰の対象となる。 =3.刑事手続= (1)裁判権 45. 議定書第3条1に定める犯罪が、締約国の自国の領域内で又は自国において登録された船舶若しくは 航空機内で行われる場合の裁判権については、刑法1条1項、2項により設定されている。 46. 議定書4条2(a)及び(b)は、容疑者が自国の国民である場合又は自国の領域内に常居所を有す る者である場合に、自国の裁判権を設定するため必要な措置をとることができる旨規定しており、これは、 裁判権の設定を締約国の裁量に委ねる趣旨と解せられる。まず、(a)については、我が国としては、刑 法3条(国民の国外犯)10号(220条及び221条)及び11号(226条から228条)、児童買 春・児童ポルノ禁止法8条2項及び10条(5条、6条、7条1項から5項、8条1項及び3項)、出入 国管理及び難民認定法74条の7並びに児童福祉法60条6項により、国民の国外犯の処罰について規定 している。次に議定書4条2(b)に定める被害者が自国の国民である場合の裁判権については、我が国 においては、刑法3条の2により設定されている。 47. 議定書第4条の3は、容疑者が自国の領域内に所在し、かつ、犯罪が自国の国民によって行われたこ とを理由として他の締約国に対して当該容疑者の引渡しを行わない場合に締約国に裁判権を設定する義 務を規定する。我が国においては、刑法3条(国民の国外犯)10号(220及び221条)及び同条1 1号(226条から228条)、児童買春・児童ポルノ禁止法8条2項及び10条(5条、6条、7条1 項から5項、8条1項及び3項)、出入国管理及び難民認定法74条の7並びに児童福祉法60条6項に よって設定されている。 48. また、この場合、裁判権の設定に先んじて引渡請求は不要である。 (2)物や収益の押収、没収及び(犯罪を行うために使用された)場所の閉鎖 (押収) 49. 議定書第7条(a)に定める押収につき、我が国においては、刑事訴訟法に基づき、捜査・公判につ き必要があるときには、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押さえることができる(刑事訴訟 法99条、218条)。 (収益の没収) 50. 議定書第7条(a)に定める没収につき、我が国においては、刑法19条に基づき、@犯罪行為を組 成した物、A犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物、B犯罪行為によって生じ、若しくはこれによ って得た物又は犯罪行為の報酬として得た物及びCBに掲げる物の対価として得た物を、犯人以外の者に 属しない物に限り、没収することができ、同法19条の2により、B又はCに掲げる物の全部又は一部を 没収することができないときは、その価額を追徴することができる。さらに、一定の場合には、2000 年2月に施行された、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律13条から16条により刑 法の没収等を拡大し、有体物以外の犯罪収益等やその転換により得た財産につき没収ないし追徴が可能と されている。警察において、児童ポルノを不法に販売して得た犯罪収益に対し、同法に基づき、裁判所に 対し没収保全請求を行った上、検察において同収益の没収を求刑している。 (議定書第7条(c)に定める犯罪の実行に使用された場所の一時的又は恒久的な閉鎖) 51. 議定書7条(c)に定める犯罪を行うために使用された場所を一時的に閉鎖するための措置について は、我が国においては、刑事訴訟法112条が規定しており、恒久的に閉鎖するための措置については、 組織的犯罪処罰法13条が、没収について規定している(ただし、組織的犯罪処罰法による没収は、当該 不動産について犯罪収益等である場合のみ実施することができ、当該不動産が犯罪を行うために使用され た場所であることのみを理由として没収をすることはできない。)。 =4.被害者である児童の保護= (1)捜査が、被害者の実際の年齢が判然としない場合にも開始されることを確保するための措置及びそ の判断のために用いられる方法 (年齢の判断) 52. 刑事訴訟法189条2項には、司法警察員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査する ものとすると規定されており、犯罪の捜査を開始するに当たって被害者の年齢が明らかであることが不可欠 とはされていない。したがって、被害者の実際の年齢が判然としていなくても、犯罪として捜査すべきもの があれば適切に捜査が開始される。なお、被害者である児童の年齢については、捜査において収集した資料 に基づき判断する。 53. なお、警察では、捜査に当たり、被害者の実際の年齢が判然としない場合には、医療機関等に対し鑑定 嘱託を行うなどの方法により、被害児童の年齢確認を行っている。 (2)刑事手続における児童に対する特別の配慮 (捜査における被害児童への配慮) 54. 児童買春・児童ポルノ禁止法(第12条)において、児童買春等の少年の福祉を害する犯罪の被害に遭 った児童に関する活動について規定しており、警察では、国家公安委員会規則である「犯罪捜査規範」に、 捜査を行うに当たっての被害者等への配慮を定めるとともに、「少年警察活動規則」に、児童買春等、少年 の福祉を害する犯罪等の被害に遭った少年については、特段の配慮を求め、同種の犯罪の発生を防止するた め必要な措置をとることを規定している。これらを踏まえ、警察では、被害児童からの事情聴取に当たって、 児童の特性に配意することはもとより、犯罪の特性にも十分配意し、適任担当者の選定や事情聴取の方法、 回数、時間、場所等の選定など細心の注意を払っている。特に、担当者の選任に当たっては、事件の様態、 被害児童の状況等により、女性警察官等に担当させたり、事情聴取時に女性警察職員の立ち会いをさせるな ど、被害児童の心情に配慮した対応に努めている。さらに、必要に応じて、事情聴取に先立ち又は事情聴取 に並行して、少年の心理その他の少年の特性に関する知識や少年の取扱いに関する技術を有する少年補導職 員等によるカウンセリングを行っている。 (公判手続きにおける児童への配慮) 55. 児童の権利条約第3回報告のパラグラフ33参照。 56.被害者たる児童の保護のための刑事手続きに関しては、児童買春・児童ポルノ禁止法第12条が、捜査 及び公判に職務上関係のある者が、職務を行うにあたり、児童の人権及び特性に配慮することについて規定 しているほか、刑事訴訟法が、証人への付添い(刑事訴訟法第157条の2)、ビデオリンク方式による証 人尋問(同法第157条の4)など、証人として出廷した児童の人権を保護するための手続きを定めている。 57. また、児童が被害者となっている事件の公判手続においては、被害者の氏名や住居、生年月日、就学学 校名を伏せるなどの配慮がなされている。また、児童の情操を害するような尋問については、訴訟指揮権に より尋問が制限されることもある(刑事訴訟法第294条、第295条)。さらに、被害者である児童に証 言を求める場合において、法廷では証言しにくいような事情がある場合には、裁判所外において非公開で証 人尋問が行われることもある。そのような事案においては、児童が出頭しやすいように住居からなるべく近 くの施設を用いたり、児童が学校を休まなくてもすむよう放課後に実施するなど、時間帯についても配慮が なされている(刑事訴訟法第158条第1項、第273条第1項、第294条)。 58. さらに、被害者等が証言をする際、精神的な負担を軽くするための措置として、刑事訴訟法157条の 2、157条の3及び157条の4により、家族や心理カウンセラー等が証人である被害者等に付き添うこ とができるほか、被告人や傍聴人から証人の姿が見えないように遮へいをしたり、テレビモニターを通して 証人尋問を行ういわゆるビデオリンク方式による証人尋問を行うこともできることとされている。 (被害児童への情報提供) 59. 刑事司法手続に関する通知については、検察官から、被害者等通知制度に基づき通知を希望する児童に 対し、起訴事実、手続の進捗状況及び事件の処理(事件の処理結果、裁判が行われる日、裁判結果等)につ いて通知がなされ、また、警察では、犯罪捜査規範(第10条の3)において、捜査を行うに当たって、被 害者等に対し、刑事手続の概要の説明や事件の捜査の経過等ついて、捜査等に支障のない範囲で通知するこ ととしている。 60. 特に、警察では、殺人、傷害及び性犯罪等の身体犯の被害者又はその遺族に対しては、その意向に反し ない限り、捜査状況及び被疑者の検挙状況について、捜査に支障のない範囲で連絡するとともに、逮捕被疑 者の処分状況についても連絡を行うこととしている。 (児童の意見等の表明) 61. 我が国では、刑事裁判手続において、被害者である児童は、証人尋問手続でその被害感情等を述べるこ とが可能であるほか、刑事訴訟法292条の2により、裁判所は、被害者である児童又はその法定代理人か ら、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において意見を 陳述させ又は意見を記載した書面の提出をさせるものとされている。 (訴訟手続きにおける支援サービス) 62. 児童を含めた犯罪被害者等を保護するため、検察庁において、児童を含む犯罪被害者等に対し、事件の 処理結果や刑事裁判の結果等の情報を提供しているほか、犯罪被害者からの様々な相談への対応、法廷への 案内・付添い、各種手続の手助け等の支援活動を行う被害者支援員を全国の地方検察庁に配置している。 (児童のプライバシーの保護) 63. 児童買春・児童ポルノ禁止法第13条には、児童ポルノ等に係る児童については、その氏名・年齢等に より当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事を掲載等してはならない と定められている。 64. 警察では、少年が被害者である事件又は事案について、新聞その他の報道機関に発表する場合において は、被害少年のプライバシーに十分配慮することとしており、特に、児童買春・児童ポルノ禁止法に基づき、 同法の規定に係る事件に関し、報道機関に広報を行うときは、被害児童の氏名若しくはその在学する学校名 又はこれらを推知されるような事項の発表を行わないこととしている。 (被害者等への脅迫及び報復からの保護) 65. 我が国では、刑法105条の2により、自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識 を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又 は強談威迫の行為をした者は、証人等威迫罪に該当するとされており、被害者である児童らに対してこれら の行為を行った時には同条により1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処罰されることになる。また、 被害者である児童が刑事裁判手続等において証人となる場合、刑事訴訟法299条の2により、検察官又は 弁護人は、児童やその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行 為がなされるおそれがあると認められるときは、相手方に対し、児童らの住所等を特定される事項が被告人 を含む関係人に知られないようにすること、その他児童らの安全が脅かされることがないように配慮するこ とを求めることができる。 66. また、警察では、犯罪捜査規範に基づき、警察官は、被害者等に後難が及ぶおそれがあると認められる ときは、被疑者その他の関係者に、当該被害者等の氏名又はこれらを推知させるような事項を告げないよう にしているほか、必要に応じ、当該被害者等の保護のための措置を講ずることとしている。 (賠償) 67. 我が国においては、損害を被った児童は、加害者に対して損害賠償を請求する権利を有し(民法第70 9条)、加害者を被告として損害賠償を請求する訴えを提起することができる。 68. また、損害を被った児童は、加害者に損害賠償を命じた確定判決等に基づいて、加害者の財産に対する 強制執行を申し立てることができる。 (被害児童のリハビリ支援等) 69. 児童買春・児童ポルノ禁止法第15条、第16条が、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する規 定を定めているほか、児童相談所において、被害を受けた児童から相談等があった場合、カウンセリング等 の心のケアを実施する等、児童の心身の状況に応じた対応を行っている。 70. 警察では、児童買春等の少年の福祉を害する犯罪の被害に遭った児童に対して、被害少年が受けた精神 的ダメージを早期に克服して立直ることができるよう、都道府県警察に設置された少年サポートセンターを 中心として、少年の特性に関する知識や少年の取扱いに関する技術を有する少年補導職員等が、必要により 部外の専門家や民間ボランティアとも協力しつつ、個々の少年の特性を踏まえたきめ細かなカウンセリング や保護者等と連携しての環境調整等による継続的な支援を実施している。 71. さらに、児童買春に係る被害児童の立直り支援として、被害児童の年齢や状況に応じ、要保護児童等と して児童相談所への通告等を行い、立直り支援の措置を講じ、再被害を防止するよう努めている。 72. また、少年に有害な仕事からの保護については、関係法令を活用した継続的な取締りを行い、危険な業 務や性を売り物とする営業に従事するなど有害な環境下に置かれた少年の保護活動を行うとともに、これら により被害に遭った少年に対し、心身のダメージを軽減し、早期立ち直りを図るため、カウンセリングを実 施し、児童相談所と協力しながら、再被害を防止するための措置を講じている。 73. なお、児童の権利に関する条約第3回政府報告パラ20参照。 =5.児童の売買、児童買春及び児童ポルノの予防= (1)犯罪を防止するための措置 (国内計画等) 74. 政府は、1996年にストックホルムで開催された「第1回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」 のフォローアップとして、2001年2月に「児童の商業的性的搾取に反対する国内行動計画」を策定し、 これを踏まえ、各関連省庁においては、児童の商業的性的搾取に関する犯罪の予防等に努めている。また、 児童買春・児童ポルノ禁止法第14条においては、児童ポルノに関する行為等を防止するための啓発活動等 について規定されており、関係省庁が一致して、同法に関する啓発活動、取締り等により、犯罪防止に取り 組んでいる。 75. さらに、2003年12月、政府は、「青少年育成施策大綱」、「犯罪に強い社会の実現のための行動計 画」を策定、青少年の被害防止・保護に関する施策や少年の非行防止につながる健やかな育成への取組みに 関する施策が盛り込まれた。これらを踏まえ、警察では、児童買春等の少年の福祉を害する犯罪に対する取 締りを強化している。 (人身取引) 76. 児童を含む人身取引については、我が国は、2004年12月に、人身取引の防止・撲滅と被害者の保 護に向け、総合的・包括的な人身取引対策を講ずることを目指して、「人身取引対策行動計画」を策定し、 関係省庁において、人身取引の予防・取締り・訴追・被害者の保護のため各種の立法や施策を通じて努めて きている。また、我が国は、人身取引対策につき、例えば民間NGOに被害者の一時保護を委託したり、旅 行業界に対して児童の性的搾取に加担しないよう通達を行った他、地方入国管理局官署においては、関係機 関・団体及び関係省庁へ呼びかけて連絡会議を開催する等様々なレベルで関係団体と協力してきている。 (買春旅行) 77. 途上国への買春旅行について、旅行業法第13条第3項においては、施行地の法令に違反する行為を行 うこと及び旅行地の法令に違反するサービスの提供を受けることに旅行業者が関与すること等を禁止して おり、更に、政府においては、日本人海外旅行者の不健全な行動に関与したことが明らかな旅行業者につい ては業者名等を公表すること等を内容とした通達を発出している。 78. なお、2005 年3 月、(社)日本旅行業協会、(社)日本海外ツアーオペレーター協会及び大手旅行会社 60社は、ユニセフが進める「旅行と観光における性的搾取からの子どもの保護に関する行動規範(Code of Conduct)」に調印した(現在調印大手旅行会社は67社となっている)。 (インターネットを利用した児童買春・児童ポルノの防止) 79. 2003年6月、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」 (以下「出会い系サイト規制法」という。)が制定され、同年12月からすべての規定が施行された。同法 は、インターネット異性紹介事業を利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等を禁止する とともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するための措置等を定めることにより、イ ンターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、児童の健全育成を図 ることを目的としている。 80. 同法の第5条においては、「国及び地方公共団体は…児童によるインターネット異性紹介事業の利用の 防止に資する技術の開発及び普及を推進するよう努めるものとする」と規定され、また、同法律案に係る附 帯決議(参議院)においても、「フィルタリング機能を始めとする児童の利用防止のための技術開発や普及 について官民一体となって取り組むこと」とされている他、「e-Japan 重点計画2003」(2003 年8 月8 日決 定)において、「インターネット上の違法・有害情報対策」の一環として「2005 年度までに、モバイルフィ ルタリング機能の実現に向けた検討(を行う)」と言及されたこと等を受け、我が国は、児童を有害コンテ ンツから保護し、その健全な育成を図るため、平成16年度からモバイルフィルタリング技術の研究開発を 開始した。なお、「e-Japan 重点計画2004」(2004 年6月15 日決定)においても、「2005 年度までに、携帯 電話、PHS端末用フィルタリング内蔵ブラウザ等のモバイルフィルタリング技術を開発・実現する」と言 及されている。さらに、「インターネット上における違法・有害情報対策について」(2005 年6 月30 日IT 安心会議取り纏め)において、モバイルフィルタリング技術の研究開発を進めることが掲げられた。 81. また、インターネットの急速な発達・普及に伴い、インターネット上における違法・有害情報(児童ポ ルノ、麻薬販売等)等の流通が大きな社会問題になっているため、総務省では、2005 年8 月から「インタ ーネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」を開催している。なお、同研究会の最終報告書が 2006 年8 月25 日に公表されたことを受け、業界団体によるガイドライン及びモデル約款の策定に協力し、 プロバイダ等による違法・有害情報の削除及び発信者への警告、利用停止などの自主的対応を支援している。 82. さらに、総務省は、業界団体によるガイドラインの策定に協力し、プロバイダ等による児童ポルノ等の 違法・有害情報の削除及び発信者への警告、利用停止などの自主的対応を支援するとともに、ガイドライン の運用状況を必要に応じて把握し、適切な運用の確保に努めている。 83. また、インターネット上には児童ポルノ等の違法情報や有害な情報が数多く流通しており、インターネットの利 用に起因して数多くの犯罪や犯罪被害が生じていることから、これらの違法・有害情報に対して効果的に対応する ため、警察庁では、2005 年7月から、インターネット利用者から寄せられるインターネット上の違法・有害情報に関 する通報を受理し、一定の基準に従って違法・有害情報に該当するものを選別した上で、違法情報については、警 察への通報及びISP(インターネット・サービス・プロバイダー)等への削除依頼等の実施、有害情報については、 ISP 等に契約約款等に基づく削除等の措置を依頼するとともに、インターネット上の違法・有害情報に関する民間レ ベルでの国際的な連携といった役割を果たす機関であるインターネット上の「ホットライン」活動の推進に向け、有 識者等により構成される会議において検討を行った。その結果を受け、2006年6月、警察庁が財団法人インター ネット協会にホットラインに関する業務を委託し、インターネット・ホットラインセンターの運用が開始された。 (2)公衆一般の意識向上に関する措置 84. 外務省においては、議定書の条文をホームページに掲載した他、2005年1月には外務省広報誌(約 3400団体に配布)に関連記事を掲載して広報を行った。また、2005年3月に、児童の権利に関する 条約及び議定書の条文(原文及び日本語仮訳)を掲載したリーフレットを2万部作成し関係方面に配布して いるところである。その他、関係各省庁において、公衆一般に向けて児童の性的搾取防止のための広報や啓 発を実施している。 85. 児童買春・児童ポルノ禁止法14条1項が、犯罪防止のための、児童の権利に関する国民の教育等につ いて規定しており、警察では、同法について、国民一般向けの広報用リーフレットに、同法の内容について 分かりやすく掲載している。 86. 警察では、2002年から毎年、児童の商業的・性的搾取問題に取り組んでいる東南アジア各国の警察・ 司法機関及びNGOの代表者等を我が国に招へいして、「東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取対策 に関するセミナー及び捜査官会議」を開催(2006年11月で5回目)し、東南アジアにおける児童の商 業的・性的搾取及び被害児童の保護等を含む取組み状況等について意見交換を行うとともに、セミナーにつ いては一般からも傍聴を募り、関連情報の普及に努めている。 87. 人身取引対策については、ポスターを全国の地方入国管理官署において掲示したり、また、人身取引被 害者に警察への救助要請を促すリーフレットを、全国の地方入国管理官署に配布するなどの広報・啓発を実 施している。また、内閣府は、関係省庁と連携・協力して、「人身取引は重大な人権侵害であり、国際的な 組織犯罪である」旨のポスターを約3万枚作成し、配布して広報啓発に努めている。 88. 買春旅行については、1999年11月に児童買春・児童ポルノ禁止法が施行されたのを受け、政府に おいては、旅行業界に対し、同法の周知及び同法に関する情報提供を行うことを要請する旨の通達を発出し、 業界内の意識啓発を行っている。なお、旅行業協会においても、各研修を通じて、旅行会社の従業員に対す る教育を行うとともに、パンフレットの配布、広報誌への掲載等の周知活動を行っている。 89. 外務省作成の日本人海外旅行者向け海外安全対策に関する冊子の中で、児童買春が国外犯として処罰の 対象とされる旨明記し、児童買春の発生を防止するための広報を行っている。 90. 警察では、児童買春等の犯罪被害の温床となり易い、いわゆる出会い系サイトを利用することの危険性 や、2003年9月に施行された出会い系サイト規制法の内容について、都道府県警察を通じ、全国の中学 校にリーフレットを配布するとともに、都道府県警察本部に、出会い系サイトを利用しないよう呼び掛ける ための広報啓発ビデオを配布した他、中学生・高校生を対象とした犯罪被害防止に関する講演等を実施し、 犯罪の被害に遭うことを防止するための啓発を行ったり、保護者・教職員等を対象としたハイテク犯罪被害 防止の講話の実施を行った。 91. また、警察では、これらの事犯に関する統計資料や事件の概要をホームページ等で公開し、被害防止の ための広報啓発を実施している。 92. 法務省の人権擁護機関では、児童の人権を含め、人権を尊重することの重要性を広く国民一般に認識し てもらうなど、人権尊重思想の普及高揚を図るため、街頭啓発、講演会・座談会の開催、テレビ・ラジオの 放送、パンフレットの配布など積極的な啓発活動を展開しているほか、児童を含めたあらゆる人々に対する 差別をなくすため、日常的な啓発活動に加え、人権週間(毎年12月4日から10日まで)において、全国 的な啓発活動の強調事項の一つとして、「子どもの人権を守ろう」を掲げて様々な啓発活動を実施している。 また、人権擁護委員の日(毎年6月1 日)や人権啓発フェスティバル(毎年全国2都道府県で開催)などに おいても、講演会、シンポジウムなどを通じて全国的な啓発活動を実施している。引き続きこれらの啓発活 動に努め、児童の人権に関する周知を図るとともに、児童の人権問題発生の予防に寄与していく。 (3)犯罪を宣伝する物の製造や頒布を効果的に禁止するため措置 93. 「青少年育成施策大綱」及び「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」において、違法・有害な情報 からの少年の保護等が盛り込まれたことを踏まえ、警察では、公衆電話ボックス等にいわゆるピンクビラを はり付ける行為に対しては、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、売春防止法、各都道府県 における迷惑防止条例等の関係法令を活用した適切な取締りをより一層推進するなどしているほか、地域住 民や関係団体と協力して風俗環境の浄化に努めているところである。 94. また、インターネット上の違法・有害情報等に起因する事案の発生を踏まえ、「IT安心会議」(インタ ーネット上の違法・有害情報に関する関係省庁連絡会議)で取りまとめられた対策に基づき、警察では、学 校等と連携し、少年をインターネット上の違法・有害情報から守るため、様々な機会を通じて、少年やその 保護者等を対象に、 (1) フィルタリングソフトの普及や家庭における利用の促進 (2) インターネット上の情報を取捨選択して活用できる能力の向上とモラル教育の充実などの啓発活動 を行っている。 95. そのほか、インターネットカフェ等における違法・有害な情報から少年を保護するため、日本複合カフ ェ協会による、青少年の身分確認、フィルタリングシステムを導入したパソコンの利用等を内容とした、自 主規制の制定について助言している。 96. さらに、児童買春等の犯罪の温床となり易い、いわゆる出会い系サイト等の有害情報を提供するサイト の問題が深刻であるため、警察では、これらのサイト開設者に対して、民間団体が少年の利用防止のための 必要な措置を求めたり、これらサイトを利用する児童に対して注意喚起する活動(2004年6月から開始) について協力を行っているほか、警察において、児童ポルノ等の違法・有害情報に対するサイバーパトロー ルを実施している。 97. そのほか、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律は、アダルトビデオ等の販売、貸出を行 う営業を営む者がわいせつ物頒布又は児童ポルノ頒布等の罪を犯した場合には営業停止を命ずることがで きる旨規定しており、警察では、同法に基づいた措置を講ずることとしている。 =6.国際協力= (1)貧困等に対処するための国際協力 98. 児童の売買を含む人身取引の問題の根本原因として開発途上国における貧困や経済格差の問題がある。 国内に就業の機会がないこと、教育の機会が十分に与えられていないことも、児童の性的搾取・トラフィッ キングを助長する要因の一つとなっている。我が国は、開発途上国の貧困削減や開発支援への取組みをOD Aを通じて積極的に行っている。 99. 貧困削減は、我が国のODA大綱においても、重点課題の筆頭に掲げられている。我が国は、ミレニア ム開発目標の主要分野である教育、保健医療、水・衛生の他、農業等の分野における協力を重視しつつ、ま たジェンダーにも配慮し、開発途上国の人間開発、社会開発を支援している。 100. 詳細については、児童の権利条約第3回政府報告I.Kを参照。 (2)被害児童の保護・支援 101. 我が国は、国際会会議の開催、国際機関を通じた支援等を通じて、途上国における児童の商業的性的 搾取対策を積極的に行ってきている。 102. 例えば、2003年6月に、UNICEFの実施するラオス・女子トラフィッキング防止のための女 子教育及びコミュニティ開発に対し、人間の安全保障基金を通じて約49万ドルの支援を行った他、200 5年には、インド洋地震津波災害を受け、人身取引対策を含む「津波被災子ども支援プラン」として、UN ICEF、IOM、WHO、UN−HABITAT等に対し総額約8600万ドルを拠出した他、IOMに 対し、「日本におけるトラフィッキング被害者帰国支援事業」のため約16万ドルを拠出。さらに、200 5年10月には、UNICEFに対し、被害児童の支援を含む東南アジア人身取引対策(フィリピン、タイ) プロジェクトのために約65万ドルを拠出し、パキスタン地震災害についても、IOMが実施する人身取引 対策プロジェクトを支援している。 103. なお、国内においては、児童を含む人身取引の被害者に関して、出入国管理及び難民認定法の一部改 正を行い、同法第2条第7号の規定に人身取引等の行為の定義(「18歳未満の者」に対する行為について も盛り込んだ)を設け、被害者として認められる外国人については、一部の上陸拒否事由及び退去強制事由 から除き、また、上陸拒否事由又は退去強制事由に該当する場合でも上陸特別許可又は在留特別許可の対象 となることを明示した。 (3)刑事手続に関する国際協力 (司法協力) 104. 議定書3条1に定める犯罪について行われる捜査、刑事訴訟又は犯罪人引渡しに関する手続について、 締約国への援助に関連する国内法規には、国際捜査共助等に関する法律、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法、 逃亡犯罪人引渡法がある。 105. 国際捜査共助等に関する法律によれば、外国から、当該外国の刑事事件の捜査に必要な証拠の提供の 要請があり、非政治犯罪性、双罰性、相互主義の保証等同法に定められた要件を満たす場合には、関係人の 取調べ、鑑定嘱託、実況見分、書類その他の物の所有者等からその提出を求めること、公私の団体等に対す る照会、差押、捜索、検証、証人尋問等の必要な証拠の収集を行い、これらの結果得られた証拠を提供する ことができる。同法に基づき、国際刑事警察機構(ICPO)から、当該外国の刑事事件の捜査についての協力 の要請を受けたときは、これが非政治犯罪性及び双罰性といった同法に定められた要件を満たす場合には、 関係人に対する質問、実況見分、書類その他の物の所有者等からその提示を求めること、公私の団体等に対 する照会等の調査を行い、調査の結果得られた資料、情報を提供することができる。 106. また、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法に基づき、日本の裁判所が外国裁判所の嘱託を受けて証拠調べ を行うことができる。 107. さらに、逃亡犯罪人引渡法によれば、一定の要件の下、逃亡犯罪人について引渡しを行うことができ る。 (物・収益の押収又は没収のため他の締約国から受けた要請に関する情報) 108. 議定書7条(b)に定める他の締約国からの要請に関し、我が国においては、組織的な犯罪の処罰及 び犯罪収益の規制等に関する法律59条以下の規定に従い、要請に応じることとなる。 109. なお、本議定書が我が国について効力を生じた2004年9月2日から2005年9月30日までに、 本議定書7条(b)に基づく要請が他の締約国からなされたことはない。 110. 二国間・多数国間の国際取決めについては下記(4)の項を参照。 (4)二国間・多数国間の国際約束・協力 (国際機関・外国当局・NGOとの協力) 111. 我が国は、人身取引の被害者の適切な保護の確保の観点から、NGO団体の運営する民間シェルター 等へ保護要請を行ったり、被害者が早期帰国を希望する等の場合にはIOM(国際移住機関)と連携し、帰 国の支援を行っている。また、出入国管理及び難民認定法の一部改正を行い、人身取引対策防止対策の一つ として、外国入国管理当局に対する情報提供規定を新設した。 112. 5.(2)パラ86参照。 (バリ・プロセスに対する貢献) 113. 2002年2月、バリにてインドネシア・豪共催による「人の密輸・不正取引及び関連の国境を越え る犯罪に関する地域閣僚会議」が開催され、アジア大洋州、中東等の38カ国及び関係機関から34の閣僚 (我が国からは杉浦外務副大臣(当時))が出席した。同会議のフォローアップ・プロセス(バリ・プロセ ス:注)として、「国際、地域協力」及び「政策・法整備・法執行」に関する2つのアドホック専門家グル ープが設置され、我が国は、情報共有部門における調整役として、人の密輸問題に関する情報交換会議を実 施するなどしており、2005年6月には、東京において「人身取引撲滅のための関係省庁間による行動計 画策定に関する作業部会」を開催した。また、2005年11月には、バリ・プロセスにおける「児童買春 に関する地域戦略セミナー」(タイ・バンコク)へ参加し、児童買春、児童ポルノに対する日本警察の取組 みについて紹介するとともに、各国の捜査機関等と情報交換を行っている。 114. また、バリ・プロセスにおける各種成果物の情報共有ツールであるパリ・プロセス・ウェブサイトの 維持・運営のため、IOM(国際移住機関)に2003年以降毎年1万ドルの拠出を行っている。 (注)バリ・プロセス:密入国人身取引及び関連する国境を越える犯罪に対する地域協力の枠組みであり、40か 国、IOM(国際移住機関)及びUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が参加している。これまで2回の閣僚会議(我が 国からはいずれも外務副大臣が参加)、3回の高級実務レベル会合を開催。日本は当初から積極的に関与しており、 特に情報共有分野で貢献している。 (G8等との協力) 115. 2003年、G8司法・内務閣僚会合において、インターネット上の性的搾取から児童を保護するた めのG8児童保護戦略が承認されたことを受け、我が国を含めたG8各国は、情報の収集、共有、産業界・ NGOとの協力、G8以外の国へのアウトリーチ等に取り組むこととされており、警察では、その一環とし て、児童の性的搾取に関する国際データベースの創設に向けた検討を行ってきた。2005年9月、同デー タベースの創設に係る作業が設置主体となるICPOに引き継がれたところであり、今後も同データベース 創設に関与していく。また、我が国は、2005年9月、ICPO主催による「第23回児童に対する犯罪 専門家会合」(リヨン)に出席し、児童買春、児童ポルノ等について事例研究等を通じて諸外国と情報を共 有するとともに、外国捜査機関との情報交換を行い、協力関係を構築している。 116. また、2005年11月、イギリス政府及びヴァーチャル・グローバル・タスク・フォース(VGT) の共催による「インターネットを利用している子供たちの保護:EU/ヴァーチャル・グローバル・タスク フォース会議:インターネットをもっと安全なものにするための公民パートナーシップ」(イギリス)に参 加し、インターネット上の児童ポルノ等からの児童の保護に関して各国の捜査機関等と情報交換を行ってい る。 (条約等の締結) 117. 2005年6月、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童) の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」の締結につき、国会の承認を得た。 118. 我が国は、二国間の国際約束として、米国及び韓国との間で犯罪人引渡条約(それぞれ1980年、 2002年)及び刑事共助条約(それぞれ2006年、2007年)を、多数国間の国際約束として、20 03年、刑を言い渡された者の移送に関する条約(受刑者移送条約)をそれぞれ締結している。 (財政援助) 119. 児童の権利条約第3回政府報告I.K参照。 120. 上記(1)、(2)参照。 =7.その他児童の権利の実現に一層貢献する国内法及び国際文書= 121. 我が国にとって、児童の権利の実現に一層貢献する国内法の規定の具体例としては、例えば、児童福 祉法第34条1項7項及び9項が対象とする行為において、性的搾取・臓器移植・強制労働の各目的に限ら れるものではないことが挙げられる。また、日本が締約国である条約の具体例としては、最悪の形態の児童 労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第182号)条約において、不正な活動や児童の健 康を害する活動への児童の使用につき、最悪の形態の児童労働であるとして禁止していることが挙げられ る。(さらに、2005年6月、人身取引議定書の締結について国会の承認を得た。) (以上)
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