ポルノ・買春問題研究会

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ポルノ・買春問題研究会(略称APP研)は、ポルノ・買春問題をはじめとしたセクシュアリティの諸問題の研究を目的として、1999年12月に結成された団体。

目次

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共同代表

共同代表の一人である角田由紀子は、弁護士で、1994年から96年までミシガン大学ロースクールで、研究員としてキャサリン・マッキノンに師事。ジェンダー法学会理事。著書として「性の法律学」(1991)(ISBN 978-4641181717)、「性差別と暴力」(2001)(ISBN 978-4641280458)ほか[1]。著名な性被害者支援活動家であり、防衛医科大教授の名倉正博の痴漢冤罪事件の逆転無罪判決に対しては、性的被害を訴える女性は虚偽の供述をしているという古く誤った前提に基づいた判決であるとして批判した。

もう一人の共同代表である中里見博は、福島大学行政社会学部準教授(憲法)。論文として「性支配と人権」(2000)、「権力・ポルノグラフィ・セクシュアリティ」(2000年)、「ジェンダーが揺さぶる憲法構造の変容」(2001年)ほか。共訳書としてマッキノンドウォーキン「ポルノグラフィと性差別」(2002年)(ISBN 978-4250202001)[1]

守秘義務違反事件

2006年、APP研究会を共同主催していた弁護士が、同会のホームページを介した性暴力の被害者からの相談内容を、その際に使用した送信フォームに「寄せられた情報に関しては、守秘義務を固く守ります」と記載されていたにもかかわらず、無断で漏洩したとして、裁判の後、原告と被告との間に委任関係がないことが守秘義務の妨げにはならないとして敗訴している[2]。その後、APP研側の弁護士が控訴審で勝訴しているが、この件の影響によりAPP研のサイトでは「性被害による相談」を拒絶するようになった。

理論社問題

2007年10月、理論社からバクシーシ山下が出版した『ひとはみな、ハダカになる。』(ISBN 978-4652078297)が、本の読者対象として設定されている高校生未満の子どもたちに被害を与えるとして、その「回収・絶版」を求める署名運動を起こしている。APP研究会では、子どもたちが同書を読むことで、山下の「デビュー作」として紹介されている「女犯」などの「徹底的な女性蔑視と女性への暴力を娯楽化した暴力AV」を視聴へと進んだ場合に被害が発生しかねないとしている。また、今回の「回収・絶版」要求は、子どもに深刻な被害(権利侵害)が発生する現実的な危険が差し迫っており、「回収・絶版」以外の方法がないものとして選択されたものであるとしている。

2008年12月17日、要請運動の代表世話人が1万筆の署名を携えて、理論社を訪ねたが、「性被害者支援のプロフェッショナルの人々に対して理論社は「ファシスト」呼ばわりをしてその要求を一蹴」したという。APP研究会では、今回の「回収・絶版」の要求は、あくまで理論社の自主規制を求めたもので、なんら公権力の介入を求めたものではないとしている。また、「数の力にものをいわせて自分たちの気に入らない思想や表現を市場流通から排除することを求めるいわゆる「悪書追放」運動 」とは明確に一線を画すものであるとしている[3]

性暴力ゲーム事件

2009年2月、国際的なフェミニズムの人権団体であるイクオリティ・ナウが、ILLUSIONの製作したレイプレイが「性暴力ゲーム」であるとして、その流通禁止を求める運動を開始した。イクオリティ・ナウは、APP研究会の共同代表である角田由紀子がボードメンバーを務める友好団体で、角田は、同会代表でラディカル・フェミニズムの研究者でもある中里見博(福島大学)とともに、読売新聞などのマスメディアに活発なコメントを寄せるなどして同問題でも協力関係にある。なお、女性のモノ化の廃絶を求めているAPP研究会の取り組みは、同問題に関するイクオリティ・ナウの声明文でも好意的に紹介されている。

児童ポルノ」も参照


天皇制批判

ジェンダーフリーという観点から、天皇制ならびに皇室典範の廃止を、公式サイトなどで訴えている。

 「天皇のような差別的・特権的・反動的地位に就く権利というのは基本的に、レイプ権に近い差別的特権的「権利」であると思います」(ポルノ・買春問題研究会公式サイト 2001年12月4日)[4]

 「女の人権を侵害することによってしか成り立たない制度に依拠しなければならない人を、なぜ私達は象徴として仰がなければならないのか。そのことが議論されていないんじゃないかと思います」(角田由紀子、週刊金曜日2006年9月15日号)

その他

日本革命的共産主義者同盟の関係団体が主催するイベントで、会員が度々講演を行っている。

 2004年6月26日「アジア連帯講座“ポルノ被害とは何か”」講師 森田成也(ポルノ・買春問題研究会)[5]

 2005年7月19日「アジア連帯講座“性差別と暴力をなくすために私たちはなにができるのか”」講師 角田由紀子(ポルノ・買春問題研究会)[6]

脚注

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  1. ^ a b ポルノ・買春問題研究会 (2002). "メンバー紹介" (日本語). ポルノ・買春問題研究会公式サイト. 2009-05-23 閲覧。
  2. ^ "主文PDF" (日本語). 裁判所webサイト (2006-10-06). 2009-05-14 閲覧。
  3. ^ ポルノ・買春問題研究会. "理論社問題とポルノ被害" (日本語). ポルノ・買春問題研究会公式サイト. 2009-05-15 閲覧。
  4. ^ ポルノ・買春問題研究会. "「スタッフの声/皇室典範改訂問題」" (日本語). ポルノ・買春問題研究会公式サイト. 2009-06-21 閲覧。
  5. ^ ポルノ・買春問題研究会. "「アジア連帯講座」" (日本語). アジア連帯講座公式サイト. 2009-06-21 閲覧。
  6. ^ ポルノ・買春問題研究会. "「アジア連帯講座」" (日本語). アジア連帯講座公式サイト. 2009-06-21 閲覧。

関連項目

外部リンク

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